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第14回(2020年・北京OL)【全体会議等全般】

【写真】日本会場と中国会場をオンラインで繋ぎ開催

開催概要

日程:12月20日(日)
場所:ザ・プリンスパークタワー東京(日本会場)
開催形式:日本と中国双方に会場を設置し、オンラインで接続
 10:30~11:10開会挨拶(各10分×4名)
  【中国】何 立峰   国家発展改革委員会主任
  【日本】梶山 弘志 経済産業大臣
  【中国】李 成鋼  商務部部長助理
  【日本】宗岡 正二 日中経済協会会長
 11:10~11:15 準備
 11:15~11:35 文書交換式(20分)
 11:35~11:50 休憩
 11:50~12:30 日中企業代表講演(各10分×4名)
  【中国】辛 保安 国家電網有限公司 総経理
『エネルギーインターネットの構築によるクリーンな低炭素エネルギーへの転換を促進』 
  【日本】白井 博史 旭化成株式会社 上席執行役員 研究・開発本部長
『旭化成のカーボンリサイクルへの取り組み(CO2を原料としたポリカーボネート製造プロセス)』 
  【中国】趙 峰 三峡集団長江生態環保集団有限公司 董事長
『保護に力を結集し、長江経済ベルトのハイクオリティな発展に貢献』
  【日本】内田 浩一 丸紅株式会社 執行役員、エネルギー本部長
『丸紅の水素事業』
 12:30~12:35 閉会
 
 14:00~17:00 分科会※水素・クリーン電力分科会のみ14:30開始 
  1.エネルギー効率の向上(省エネ)分科会
  2.自動車の電動化・スマート化分科会
  3.水素・クリーン電力分科会
  4.日中長期貿易(水環境対応と汚泥処理)分科会
以上
 第14回日中省エネルギー・環境総合フォーラムが12月20日に開催されました。今年は新型コロナウイルスの影響により往来が制限される中、日中双方に会場を設置してオンラインで繋ぐ形式で開催されました。日本会場には約100名、中国会場には約300名が参集しました。
 午前中の全体会議では、何立峰・国家発展改革委員会主任と梶山弘志・経済産業大臣、李成鋼・商務部部長助理と宗岡正二・日中経済協会会長の順で開会挨拶を行いました。次に、日中協力モデルプロジェクト文書交換式が行われ、両会場に参集した調印代表により合計14件の案件が披露されました。今回の開催により、第1回から披露された案件は、累計で400件を超えました。後半部分では企業代表講演で日中の企業代表各2名が省エネ・環境分野における取り組みや日中間の協力に向けた可能性などを紹介しました。
 午後にはエネルギー効率の向上(省エネ)分科会、自動車の電動化・スマート化分科会、水素・クリーン電力分科会、日中長期貿易(水環境対応と汚泥処理)分科会の4分科会が開催され、引き続き日中両会場をオンラインで繋ぎ、プレゼンテーションや質疑応答など、活発な交流が行われました。

全体会議 開会挨拶・基調講演 発言要旨(発言順)

何立峰 中国国家発展改革委員会主任

何立峰 中国国家発展改革委員会主任
 コロナ禍で本フォーラムが予定通り開催されたことは、省エネ・環境分野が重視されており、グリーンな発展を共に推進するという両国の自信と決意の表れである。中国は資源の節約と環境の保護を国策と位置づけ、持続可能な発展を国家戦略として打ち出している。先日の五中全会で発表された「第14次五カ年計画と2035年までの長期目標に関する建議」で示されたように、中国は今後も、生体文明建設を推進し、人と自然の調和を目指す。
 「中国の温室効果ガス排出量は2030年までにピークを迎え、2060年までにカーボンニュートラルを実現する」という目標を達成するには大きな努力が必要だが、中国は有言実行であり、世界に対する約束を果たし、世界の気候変動への対応に更なる貢献をしていく。また、3大堅塁攻略戦の1つである環境対策に注力し、生態環境の修復に取り組み、資源の利用効率を向上させる。
 新型コロナウイルスが蔓延する中、日中両国がこの困難に打ち勝ち、実務協力を強化し、ポストコロナの「グリーンな復興」を推進し、国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」実現のために協力していくことを期待する。
 そのために、日本との省エネ・環境分野における産業協力を深化させ、グリーン技術に関するイノベーション協力の展開や、菅義偉総理が発表した50年までにカーボンニュートラルの実現に向けた気候変動対応の協力強化が必要である。また、パリ協定やRCEPなどの多国間の枠組みを活用し、世界の環境対策により大きな役割を果たし、グリーンな発展を推進していきたい。

梶山弘志 経済産業大臣

 新型コロナウイルス拡大により世界の風景は一変した。他方で、オンライン利用などの創意工夫でモノ・ヒトの交流が活発化し、新たな形での経済が回りだした。2020年11月には、8年の交渉を経て、日中含む15か国でRCEP協定が署名された。世界の人口・GDP・貿易総額の3割をカバーする巨大経済圏誕生を契機に、サプライチェーンの更なる活性化や多様化が進んでいくことになる。
 この秋、日本は2050年までに、中国は2060年までに、それぞれカーボンニュートラルの実現を目指すことを発表した。世界のエネルギー消費量の約3割を占める日中両国の「脱炭素」宣言には、世界の注目が集まっており、日中両国の産学官が脱炭素に向け具体的な連携を進めることは、世界の課題解決に大きく貢献するものと言える。
 今回のフォーラムは、「脱炭素に向けたエネルギー協力」が主要テーマだが、最近、「水素」と「カーボンリサイクル」の分野において特に日中の協力が進んでいる。水素分野において、日本は技術開発や実証を進め、世界に先駆けた水素社会の実現に取り組んできた。他方、中国では、工場などから副生物として発生する水素の利活用が拡大している。今後、世界で水素の社会実装を進めていくためにも、安価な水素を活用したプロジェクトの実施など、両国の特徴を活かした更なる協力が期待される。
 また、脱炭素社会への円滑な移行のキーテクノロジーであるカーボンリサイクル分野についても、日本は技術開発・実証から将来の社会実装に向けて、着実に取組を進めている。他方、中国は、この分野の技術で多く用いられる水素に関して高いポテンシャルを持っており、日中が連携して取り組む可能性が広がっている。
 本フォーラムでは、省エネ・環境分野の技術やプロジェクトに関する積極的な交流や意見交換を通じ、累計で400件を超える協力案件を実現し、具体的なビジネス創出の成果を生み出してきた。本フォーラムを通じ、日中両国が切磋琢磨し、win-winの協力をさらに深化させ、世界の経済と環境の好循環実現に大きな貢献をしていくことを期待する。

李成鋼 中国商務部部長助理

李成鋼 中国商務部部長助理
 日中間の貿易や投資はグリーンな転換を加速させたことで、協力がさらに拡大している。先月開催された第3回中国国際輸入博覧会では「省エネ・環境専門エリア」を設置し、各国の企業が先進的な技術や設備などを展示する中、日本企業は最多の出展数を誇った。そして、日中第三国市場協力が省エネ・環境分野の新たな協力の可能性を切り開いている。さらに「外商投資法」と「ビジネス環境最適化条例」の制定は、グリーンビジネスの創出や協力の後ろ盾になっている。
 日本との協力について4点を提案したい。
  1. 政策対話を強化し、中国の「第14次五カ年計画と2035年までの長期目標に関する建議」や日本の「50年までにカーボンニュートラルを実現する」という目標などについて、省エネ・環境分野での実務協力の内容をすり合わせていく。
  2. 新型コロナウイルスにより重要性が顕在化した、日中間の産業チェーンやサプライチェーンの安全と安定を確保し、グリーンな理念に合致する発展を実現する。
  3. 日中の地方都市がより密接な関係を構築し、両国の経済貿易における協力の新たな原動力を生み出す。本フォーラム以外にも、日中長期貿易の枠組みや日中韓が参加する環黄海経済・技術交流会議などの機会を活用し、日本の自治体や国家戦略特区が中国の自由貿易試験区、自由貿易港、そして雄安新区など、省エネ・環境分野の協力を推進するエリアとの協力を歓迎する。
  4. 第三国市場における省エネ・環境分野の協力を推進する。この分野は日中の相互補完性が強く、対象国に基づいて日中両国がそれぞれの強みを発揮することで、高水準かつ持続可能な発展を実現することができる。

宗岡正二 日中経済協会会長

宗岡正二 日中経済協会会長
 2020年、日本での企業の生産活動や国民の社会生活は大きく制限され、新型コロナウイルス感染の収束が見通せない中、日本経済界としては、いかに企業活動を維持し拡大していくかに苦慮している。
 コロナ禍での社会活動に大きな制限がある中、情報通信技術(ICT)を活用したオンラインによる手法が多くの分野で受け入れられてきている。本日のフォーラムも、オンラインで東京と北京を結ぶ形で行われ、10月には「日中グリーン発展省エネ・環境技術交流会」で東京と中国の青島の会場をオンラインでつなぎ、成功裏に開催できた。ビジネスにおけるオンラインの活用は、デジタル・トランスフォーメーション(DX)等による業務効率化やコスト低減を通じて、省エネ・環境対策に役立ち得るもので、省エネ・環境問題の解決策に幅が広がることにも注目していきたい。
 日本は2050年に向け温室効果ガス排出を実質ゼロ、中国は2060年に向けカーボンニュートラルを実現、との目標を掲げている。この目標実現に向け、省エネ・環境技術・設備の開発・普及に努め、同時に関連インフラ建設、法律・制度整備など、社会全体での周辺環境整備に努めていかねばならない。日中両国の間でも、省エネ・環境分野におけるそれぞれの優位性を活かした相互補完の関係を構築し、協力を進めていくことが重要である。
 経済活動の制限が続く中で、今回14件の新たな調印案件が生まれたことは喜ぶべきことである。今後は、さらに本格的な活動の再開に向けた準備に力を入れ、将来につなげていきたい。

全体会議 日中企業代表による講演 発言要旨(発言順)

辛保安 国家電網有限公司総経理

辛保安 国家電網有限公司総経理
 エネルギー資源の節約と生態環境の保護により持続可能な発展を実現することは、国際社会が共通して直面する課題である。その中で、日本と中国はカーボンニュートラルの実現に向けた意思を表明した。
 送電網を基本とするエネルギーインターネットは、気候変動への対応やエネルギー転換の促進に重要である。「中国の温室効果ガス排出量は30年までにピークを迎え、60年までにカーボンニュートラルを実現する」という目標を実現するには、エネルギーをクリーンかつ低炭素なものに転換しなければならない。そして、これらの推進には理念を体系化し、全方位での努力が必要である。具体的には、化石由来のエネルギーを電気エネルギーに転換する。そして、送電網の重要性をベースに、先進情報通信技術、制御技術、そしてエネルギー技術を融合したエネルギーインターネットを推進することが必要である。
 当社では送電網を強化し、世界で最も資源を最適化し、新エネルギーと送電線を最大規模で連結させた。また、一般家庭で消費される電力を石炭由来から電気エネルギーへ促進し、高速道路のEV急速充電ステーション拡充、世界最大の自動車のインターネット(IoV)プラットフォーム建設、このほか、空港・港湾・埠頭で使用する石油を電気エネルギーに転換することなどに取り組んでいる。このほか、送電網もデジタル化も推進している。
 これらの分野において日本との交流・協力の余地は大きく、双方の強みを発揮することで、日中両国の共通の目標達成に貢献したい。

白井博史 旭化成株式会社上席執行役員研究・開発本部長

白井博史 旭化成株式会社上席執行役員研究・開発本部長
 旭化成グループは、グループ理念「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献します」を掲げ、世の中の課題に応じた事業展開を行っている。理念達成のために、持続可能な社会の実現、サステナビリティの追求に積極的に取り組んでいる。
 具体的には製造過程におけるGHG(温室効果ガス)排出削減であり、エネルギー転換や技術革新などで削減を進めて、2030年度に売上高当たりの排出量について2013年度比35%減を目標としている。技術・製品によるGHG削減貢献では、クリーンな環境エネルギー社会への新技術として、主にCO2ケミストリーの開発に注力している。CO2転換利用技術であるCO2ケミストリーとは、独自のカルボニル基導入技術を基幹技術としたCO2を原料とするポリカーボネート(PC)やポリウレタン原料のイソシアネートの製造技術であり、本技術で、既存のホスゲン法では達成できなかった再生可能原料へのマテリアルフローの変革と新しいマテリアルの創出を実現する。
 また、旭化成技術はライセンスビジネスに展開しており、現在、世界各国において10基のプラントが稼働している。2018年時点で旭化成プロセスは、世界のPC製造能力の約16%に拡大した。同プロセスは中国で展開しており、2018年に最初のライセンシーの商業運転が開始され、PC製造プラントの短期間での立ち上げに成功した。試運転期間は、温水試運転が1ヵ月、実液試運転が2ヵ月であり、極めて短期間での立ち上げを実現した。

趙峰 三峡集団長江生態環保集団有限公司董事長

趙峰 三峡集団長江生態環保集団有限公司董事長
 長江経済ベルトが発展を遂げるにあたり、人と自然の調和、生態環境の限界、社会経済の持続可能な発展への悪影響が課題となっており、ごみ、化学工業、農業、船舶、尾鉱(鉱石を選鉱して有用目的元素を多く含む鉱物粒を採取した残りの鉱石)などによる汚染が深刻である。
 このような状況下で、当社は「都市部の汚水処理を切り口に、重点地域での取り組みを先行する」というコンセプトを打ち出した。国家発展改革委員会をトップとする枠組みの中で、基金や資金サポートを受けて1200億元規模の投資を行った。また、業界団体との協力を推進する過程で、日本を含む各国の企業が参画している。研究センターと協力し、一日当たり1000万トンの水質汚染の対応計画や、15000kmに及ぶ雨水と汚水の分離処理配管網の計画が完成した。これらの取り組みの結果、安徽省蕪湖市、江西省九江市、そして湖南省岳陽市等の試験都市では、COD(化学的酸素要求量)などの数値が大きく改善した。
 業界全体が前進する上で、持続性、設備や技術に新たに課される要求、さらには行政区分による違いや人々の環境保護に対する意識など多くの障壁があるが、三峡グループは大規模な資金や長期的なプロジェクトに加えて、日本企業による安全管理の理念や先進的な設備・技術を導入し、さらなる発展を実現したい。とりわけ1990年代の三峡ダム建設時には、日本企業から多くのサポートを受け、その後当社から訪日団を派遣するなど、現在も日本企業との交流・協力を継続している。今後の関係強化を図っていきたい。

内田浩一 丸紅株式会社執行役員、エネルギー本部長

内田浩一 丸紅株式会社執行役員、エネルギー本部長
 丸紅は化学品や金属、電力や建設機械など様々な分野で水素に関する取り組みを推進している。今回はエネルギー本部での水素事業を紹介したい。丸紅の水素事業は、大きく「地産地消モデル」と「水素サプライチェーン構築」の2つがある。水素は輸送面で課題がある中で、「地産地消モデル」では水素を製造地で活用する事で輸送の課題を解決している。化学工場における副生水素活用事業や、再エネ由来水素を活用して工場及びその周辺地域を巻き込んだエネルギーバランシング事業を進めている。
 一方、水素の大規模社会実装には国際サプライチェーンの構築が不可欠である。「水素サプライチェーンの構築」では、実証・事業化調査を通じて得た知見を活用し、製造・輸送・販売など様々な分野に亘り、プロジェクトの価値向上に貢献していく。
 世界最大級の水素生産量を誇る中国においては、中国の大手国営化学品会社である巨化集団と本邦大手エンジニアリング会社である日揮ホールディングスと共に副生水素の高度利活用を図るプロジェクトに取り組んでいる。中国では副生水素の回収・利用が行われているものの、今後、有効活用率を更に高めてゆく必要があると理解している。このため、巨化集団の苛性ソーダ製造プロセスで生成される副生水素を本邦のコジェネ機器で活用して工場の低炭素化を行う事業モデルの実現性を、NEDO委託事業として調査を開始した。実現性が認められれば、中国・日本に加え、他国への普及・展開を目指す。
 本件は、2019年に開催された第13回日中省エネ・環境総合フォーラムで巨化集団と締結した協力協議書が実を結んだ案件である。

本件に関するお問い合わせ

日中経済協会事業開発部/日中省エネルギー・環境ビジネス推進協議会(JC-BASE)事務局
電話:03-5545-3115
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