第15回(2021年・東京OL)
第15回日中省エネルギー・環境総合フォーラムが2021年12月26日に開催されました。新型コロナウイルス感染症の影響により両国の往来が制限される中、今年も日中双方に会場を設置してオンラインで接続するハイブリッド形式で開催されました。オンライン参加を設定しつつ、日本側約480名、中国側約270名の申し込みがありました。
午前中の全体会議では、萩生田光一経済産業大臣、何立峰国家発展改革委員会主任、山口壯環境大臣、任鴻斌商務部副部長、宗岡正二日中経済協会会長、孔鉉佑中国駐日本国特命全権大使らが挨拶を行いました。
本フォーラムでは毎回、日中両国間の日中協力プロジェクト文書交換式を行っており、これまでに402件に上る案件の覚書が披露されてまいりました。新型コロナの感染拡大により、約2年にわたって日中間の移動にも制限がかかっておりますが、そうした厳しい状況においても、11件のプロジェクトが披露されました。今回、すべてのプロジェクト関係者が会場に集まれないこととなったため、交換式は実施せず、保坂伸経済産業省資源エネルギー庁長官より紹介がありました。
後半部分では保坂伸経済産業省資源エネルギー庁長官からの講演のほか、企業代表講演で日中の企業代表各2名がカーボンニュートラル実現に向けた省エネ・環境分野における取り組みや日中間の協力に向けた可能性などを紹介しました。
午後は、昨年に引き続き、エネルギー効率の向上(省エネ)、自動車の電動化・スマート化、水素・クリーン電力、日中長期貿易(水環境対応と汚泥処理)などをテーマとするの4分科会が開催され、引き続き日中両会場をオンラインで繋ぎ、プレゼンテーションや質疑応答など、活発な交流が行われました。
写真で振り返る第15回フォーラム
開催概要
1. 主催:
日本側 経済産業省、一般財団法人日中経済協会
中国側 国家発展改革委員会、商務部、中国駐日本国大使館
中国側 国家発展改革委員会、商務部、中国駐日本国大使館
2. 日程:
2021年12月26日(日)
2021年12月26日(日)
3. 会場:東京と北京双方に会場を設置し、オンラインで接続
日本側 ザ・プリンスパークタワー東京(東京都港区芝公園4-8-1)
中国側 全体会議:国家発展改革委員会、分科会:東方宮大酒店、中国機電商会
日本側 ザ・プリンスパークタワー東京(東京都港区芝公園4-8-1)
中国側 全体会議:国家発展改革委員会、分科会:東方宮大酒店、中国機電商会
4. 規模:
日本側 約480名(申込ベース)
中国側 約270名(申込ベース)
※会場では新型コロナウイルス感染症対策の観点から、国の方針に従い、
日本側 約480名(申込ベース)
中国側 約270名(申込ベース)
※会場では新型コロナウイルス感染症対策の観点から、国の方針に従い、
感染対策(三密回避、検温、消毒、参加者連絡先の把握等)を徹底。
5. プログラム: ※時間は日本時間
10:45~12:50 全体会議
(司会進行:日中経済協会・伊澤正理事長)
10:45~11:40 日中主催者挨拶
10:45~12:50 全体会議
(司会進行:日中経済協会・伊澤正理事長)
10:45~11:40 日中主催者挨拶
- 萩生田 光一 経済産業大臣
- 何 立峰 国家発展改革委員会主任
- 山口 壯 環境大臣
- 任 鴻斌 商務部副部長
- 宗岡 正二 日中経済協会会長
- 孔 鉉佑 中国駐日本国特命全権大使 ※日本会場にて登壇
11:40~11:45 日中協力プロジェクト文書紹介
保坂 伸 資源エネルギー庁長官
保坂 伸 資源エネルギー庁長官
11:45~11:55 休憩
(司会進行:日中経済協会・堂ノ上武夫専務理事)
11:55~12:05 講演
保坂 伸 資源エネルギー庁長官
12:05~12:50 日中企業代表講演
11:55~12:05 講演
保坂 伸 資源エネルギー庁長官
12:05~12:50 日中企業代表講演
- 「現下の状況において、環境・省エネルギーという観点で日中双方が今こそ考えるべきこと」
上田 敏裕 AGC株式会社執行役員、AGCグループ中国総代表、艾傑旭(中国)投資有限公司董事長総経理 - 「『ダブルカーボン』目標を目指し、グリーン産業サプライチェーンを構築する」
趙 東 中国石油化工集団有限公司副書記 - 「資源循環・脱炭素社会への貢献:日立造船の環境技術・これまでの取り組みとこれからの取組」
芝山 直 日立造船株式会社常務取締役 開発本部長 - 「カーボンニュートラル・二酸化炭素排出ピークアウト達成の背景におけるエネルギーのグリーン化・低炭素化転換と国家電投の実践」
銭 智民 国家電力投資集団有限公司党組書記、董事長
12:50 閉会
14:30~17:30頃 分科会
全体会議 日中主催者挨拶(発言順)
萩生田光一 経済産業大臣
世界各地で新型コロナウイルスによる影響が収まらない中、本フォーラムを今年も開催できることは両国にとって大変意義深い。脱炭素化に向けた取り組みは世界的に加速してきており、多くの国が温室効果ガスの削減やカーボンニュートラルの目標を打ち出している。その中で、日本は50年カーボンニュートラルを宣言し「第6次エネルギー基本計画」を策定している。中国においても、30年のカーボンピークアウトと60年までのカーボンニュートラルに向けた行動指針を発表している。日中両国は脱炭素化に向けた長年の協力により、省エネ分野で具体的な成果を出しており、水素分野においてはさらなる協力が進められている。日中両国が本フォーラムを通じ、地球規模の気候変動問題に貢献しつつ、経済と環境の好循環を生み出していけることを期待する。
何立峰 中国国家発展改革委員会主任
30年のカーボンピークアウトと60年のカーボンニュートラルの実現は中国政府の重要戦略に関わる決意であり、経済発展の中で水素エネルギーなどの利用・貯蔵や「源網荷儲」などの社会実装を加速させるなど、グリーンへの転換を推進している。日本との協力について3点提案したい。1) アジア太平洋地域のハイレベルな開放を拡大してポストコロナの経済回復や持続可能な発展に原動力を注ぐ、2) 政策対話の強化で気候変動対応に積極的な貢献をする、3) 省エネ・環境分野の協力を深化させ、協力プロジェクトの醸成や第三国市場への展開を推進する。
山口壯 環境大臣
日中両国のGDPは世界の約23%を占めている。世界に影響力を持つ日中両国が連携を進め、国境のない環境問題に力を合わせ取り組むことが求められている。わが国は世界に野心的な気候変動対策を呼びかけるとともに取り組みを進めている。世界第2の経済大国であり世界第1の温室効果ガス排出国である中国が、「責任ある大国」として取り組みを加速させることにより、世界各国の取組が加速されることを期待する。日中がともに環境問題にしっかり取り組む意思を表明し、協力を拡大・深化していくのは国際社会での課題解決に貢献すると考えている。
任鴻斌 商務部副部長
中国は持続可能な発展の実現のため、グリーンで低炭素かつ省エネ・環境の国際協力を推進している。これは困難を伴う体系的なプロジェクトであるだけでなく、重要な発展のチャンスと壮大な協力の未来がある。中日両国経済、さらには世界経済のグリーンな発展のために4点を提案したい。1) 責任ある大国としての役割を果たし、気候変動がもたらす共同の試練に立ち向かう、2) 政策対話による意思疎通を強化して力を合わせる、3) 公平なビジネス環境を整備し、正常な企業活動を保護する、4) 実務協力を深化させ、グリーンな発展を共同で実現する。
宗岡正二 日中経済協会会長
昨年に続き新型コロナウイルス感染症がもたらした危機的状況が続いたが、感染症対策の努力やワクチン普及の効果により日本経済は力強く立ち上がりつつある。人的往来の本格的な再開には時間を要する状況が続いているが、本フォーラムをはじめオンラインを活用した交流が盛んに行われており、カーボンニュートラルの実現に向けた水素の有効活用やSDGsなどの分野で日中間の更なるビジネスチャンスが創出されることを願う。今回、11件の新たな協力プロジェクトが生まれたことは、日中国交正常化50周年とその先を見据えた協力の維持、発展にもつながるものと期待している。
孔鉉佑 中国駐日本国特命全権大使
省エネ・環境分野は中日双方が最も重視する協力分野のひとつである。カーボンニュートラルの実現にはよりクリーンなエネルギー消費への転換が重要であるが、大きなチャレンジであるがゆえに国際協力の更なる深化が必要である。そのためには、グリーンな発展が新発展理念の中で重要な地位を占め、開放的な経済発展と両立し、経済貿易のルールとの整合性に資するものであることが重要だと考える。
全体会議 講演
保坂伸 資源エネルギー庁長官
本フォーラムにおいて調印されたプロジェクトは、今回で413件に達した。当初は省エネ・環境分野が中心だったが、最近はカーボンニュートラル実現に向けた技術を対象としたものが増えている。政府間では21年11月に「脱炭素化実現に向けた日中政策対話」を開催し、こうした分野での日中協力の重要性が高まっている。カーボンニュートラルの実現が世界的な課題となる中、日中が果たす役割は大きくなっており、本フォーラムをはじめ様々な枠組みを通じて協力していくことは、両国の利益となるばかりでなく、世界の脱炭素化の実現にも資する。
全体会議 日中企業代表講演(発言順)
上田敏裕 AGC執行役員・中国総代表
改革開放以降40年にわたり対中投資を続け、中国の発展とともに当社も成長してきた。当社グループが大切にする4つの重要な価値観に「環境」があり、「環境」を意識した様々な取り組みを両国で行っている。カーボンニュートラルは世界共通の重要な国家課題である。長い協働の歴史がある日中だからこそ、連携を通じて、この課題の解決に貢献すべきである。サスティナビリティの観点を日中双方が持ち、地球規模の難題に取り組みつつ、ビジネスとしても成長させ、同時に社会課題解決につなげていくというモデルを共に作り上げていくべき時である。
趙東 中国石油化工集団公司副書記
中国は30年のカーボンピークアウトと60年のカーボンニュートラルの実現という目標を策定したことを背景に、エネルギー産業の発展モデルも転換期を迎えている。その中で、当社はエネルギー構造の低炭素化や立ち遅れた産業の淘汰を推進することで事業全体のグリーン化を促進している。また、新興産業向けの炭素繊維複合材料の開発・提携、グリーン水素をはじめとする水素産業におけるビジネスモデルの模索、さらにはカーサービスなどを通じて、統合型エネルギー企業へのシフトを加速させ、グリーン産業のサプライチェーン構築に貢献したい。
芝山直 日立造船常務取締役 開発本部長
当社の廃棄物焼却発電技術施設は205件が中国で納入されており、原発4基分に相当する発電能力を有している。また、当社が開発した農畜産廃棄物の広域的な循環利用を可能とする技術は瀋陽で実証事業の実施が計画されており、カーボンリサイクル技術であるメタネーション関連では日中双方の4者で協力覚書を締結した。これらの技術によって、日中の環境再生と保全、資源循環型社会の形成・維持に貢献するとともに、カーボンニュートラル宣言をはじめ、エネルギー需給をめぐる状況といった日中両国の国情に合致した気候変動対策に貢献したい。
銭智民 国家電力投資集団有限公司党組書記、董事長
グリーンで低炭素な循環型経済を構築する過程で、当社は従来型の化石燃料から水素などを用いた再生可能エネルギーへの転換を推進しており、自社の水素ステーションなどの設備が北京冬季五輪でも採用される予定である。また、スマートシティや美しい農村(美麗農村)建設をサポートするなど、多種多様な取り組みを推進している。日本との協力については、経済産業省が策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の内容も踏まえ、日本で運営する太陽光発電の設備容量を拡大するなど、今後新たな国際協力を加速させていく。