15年度代表団(第41回)
2015年度(第41回)日中経済協会合同訪中代表団 派遣速報
派遣概要
- 北京:2015年11月1日~5日
- 四川(成都・徳陽・綿陽):11月5日~8日(一部団員)
- 最高顧問 榊原 定征 日本経済団体連合会会長
- 団 長 宗岡 正二 日中経済協会会長
- 最高顧問 三村 明夫 日本商工会議所会頭
- 地方団長 大橋 光夫 日中経済協会副会長、昭和電工最高顧問 ほか
- 李克強 国務院総理会見
- (同席)
- 王 毅 外交部部長
- 徐紹史 国家発展改革委員会主任
- 苗 圩 工業信息化部部長
- 高虎城 商務部部長 ほか
- 姜増偉 中国国際貿易促進委員会会長ほか中国企業トップとの「日中企業家対話」開催
- 経済関係の中央政府3機関との意見交換
- 商務部:高虎城部長ほか主要幹部
- 国家発展改革委員会:胡祖才副主任ほか主要幹部
- 工業信息化部:陳肇雄副部長ほか主要幹部
- 木寺昌人特命全権大使との懇談
- 四川省訪問団
- 陳文華四川省副省長会見
- 四川省人民政府との交流会議
- 綿陽、徳陽両市を訪問し、趙輝徳陽市長、劉超綿陽市長らとの交流、代表企業視察
- 日本側の主要コメント
- 安定的で良好な日中関係の構築、そのために日中首脳会談をはじめ様々なレベルでの対話・交流。
- 中国経済の展望とそれを左右する構造改革の実行を促す質問。
- 「構造改革」の出発点として、鉄鋼等の過剰生産能力問題への取組みが急務であるとの見地から、更なる努力を要請。
- イノベーションに向けての日中協力前進の前提として、知財権保護の徹底等ビジネス環境の改善を要請。
- 包括的で質の高い日中韓FTA及びRCEPの交渉加速を要請。
- アベノミクスの下で日本経済はデフレを脱却し成長戦略を推進中。
- 李克強総理等のコメント
- 日中関係は改善の方向に向かっている。両国の努力により関係改善を図ることで、経済関係の更なる強化に必要な環境が作り出せる。
- 2020年までの次期五カ年計画期間において、「小康社会」達成のため年率平均6.5%以上の中高速成長を維持。
- 中国は過剰生産能力を消化している最中。劣後した生産能力を、期限をつけて淘汰。
- 経済構造改革の一環として、規制緩和、知財権保護、公正競争の確保等ビジネス環境の整備に努力。
- 日中韓首脳会談で日中韓FTA、RCEPの交渉加速・早期妥結で合意。
主な成果
全般
日中経済協会は、中国国際貿易促進委員会の協力により1975年以来毎年欠かさず訪中代表団を派遣してまいりました。今年の日中経済協会合同訪中代表団は、従来からの経団連に加え、今回、初めて日本商工会議所も参加し、より充実した日本経済界代表団の構成となりました。
日本側参加者数は過去最大規模となり、これは、日本経済界の中国経済の先行き、これを左右する構造改革の実行に向けた中国指導者の決意と展望に対する関心の高さを反映したものと思われます。
中国側も「新常態」にスムーズに移行し安定成長を確保することが最優先課題とする今日、日本との貿易、投資など経済交流の回復、発展を真剣に望んでおり、来年から始まる第13次五カ年計画を見据えつつ、両国経済関係の強化につき率直な対話が実現しました。
李克強国務院総理との会見
日中企業家対話、中国国際貿易促進委員会との覚書調印
商務部、国家発展改革委員会、工業信息化部との交流会議
中国経済が中高速成長を続ける背景として、可処分所得の伸びやサービス産業の急成長、都市化の進展等に伴う消費拡大、並びにイノベーションによる生産性向上に向けての取り組みの進捗、また、鉄鋼等の過剰生産能力問題について、中国政府も問題の所在を認識し、市場競争及び各種政策措置を通じ非効率生産能力の淘汰を進めつつあること等、真剣かつ建設的な説明がありました。
- 商務部との交流テーマ:グローバルビジネスの推進と環境整備(議題:アジア太平洋の地域経済連携とビジネス展開、新たな日中産業協力・対中投資とビジネス環境改善への期待)
- 国家発展改革委員会との交流テーマ:持続可能な安定成長と全面的改革深化の第13次五カ年計画に向けた展望(議題:第13次五カ年計画の展望、日本経済の現状と中国経済への期待、構造改革の主要課題とソリューション)
- 工業信息化部との交流テーマ:中国の産業構造調整と日中新産業協力(議題:過剰生産能力問題の解決に向けて、中国製造2025と新たな日中産業協力)
四川省訪問団(成都・徳陽・綿陽)の派遣
今年度の地方視察は、一帯一路戦略(新シルクロード構想)の窓口として脚光を浴びる四川省を訪問しました。本団としては、2008年の震災直後の慰問訪問以来7年ぶりとなりますが、復興が成り着実に開放戦略を進める四川の新たな発展の息吹を直観する好機となりました。
成都では、陳文華四川省人民政府副省長との会見が実現し、人材育成面、ハイテク産業、技術革新の分野での日中協力への関心が示されました。また、同省の水資源、石油と天然ガスが豊かさなどの産業優位性についても丁寧な紹介を受けました。
四川省商務庁が主催したハイレベル経済交流会議では、呉顕奎省政府副秘書長より、中国西部で最も重要な対外窓口としての国際性の高さなどが強調されました。
徳陽市では、趙輝市長より重大技術装備製基地としての同市の発展指針等について紹介を受けたほか、東方汽輪機有限公司(東方タービン)や中国第二重型機械集団公司などの代表企業を訪問しました。
綿陽市では、劉超市長より中国唯一の科学技術都市としての産業振興政策の説明を受けたほか、綿陽国家科技城(建設成就展覧館)、四川日普精化有限公司、四川九洲電器集団有限責任公司などを訪問しました。
個別テーマ
- 中国のマクロ経済は、従来に比べてスローダウンしつつも、現在進めつつある経済構造改革の実行によって中速成長を続けるであろうことを理解しました。中国は、来年3月の全国人民代表大会での次期五カ年計画の決定に向け、多岐にわたる改革・開放策の具体化方針が逐次固めていく途上にあります。その総指揮者である李克強総理や政府機関幹部より、改革への決意と具体策の一端など詳細な説明を受けました。
- 改革実行により中国のビジネス環境が改善されようとしています。昨年来、日本から中国への直接投資は大幅に減少しています。訪中団から中国のビジネス関連法制の安定性と透明性の向上、規制の緩和、知財権保護等、ビジネス環境の更なる改善を強く要請しました。中国は改革の一環として行政のスリム化、それに伴う許認可の縮減などが進展しています。中国では対外開放政策を堅持するとともに、内外を問わずビジネス環境の改善に努力中である旨、説明がありました。
- 中国の過剰生産能力問題について、構造改革の第一歩として、この問題が表裏一体の関係にある過剰借り入れの問題と併せて、中国経済の活性化を阻害し、同時にアジア・世界の市場にも悪影響を及ぼしていることから、更なる改善努力を要請しました。中国側からは、非効率な生産能力の淘汰を進めつつあること、そのために政府の手の届く各種の措置を講じたり、鉄鋼等製品需要の拡大策等を講じているとの説明がありました。
- 地域経済連携協定の交渉加速について、現在、日中韓FTA、RCEP等の地域経済連携協定の交渉が進展中です。訪中団からは、TPPの大筋合意を踏まえ、包括的で質の高い日中韓FTA、RCEPの交渉の加速を要請しました。中国側からも交渉加速に向けた積極姿勢がうかがえました。
- 経済交流の自律的発展を図る環境整備のため、日中省エネルギー・環境総合フォーラム、日中ハイレベル経済対話等、両国の戦略的互恵関係の基盤となっている対話の枠組みを定期的に開催することを提案しました。ハイレベル経済対話については、ソウルにおける日中首脳会談で来年早い時期の再開が合意されたとの報がありますが、李克強総理会見においても、日中間の経済に関する対話メカニズムについて言及がありました。また、日中省エネルギー・環境総合フォーラムの主催者である国家発展改革委員会や商務部との全体会議において、本年11月末、東京での開催に向けて積極的に準備している旨の説明がありました。