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一般財団法人日中経済協会
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【出張報告】遼寧国際氷雪経済協力商談推進会(12/12-14・瀋陽)

1. はじめに

挨拶をする宮下所長
2024/12/23 Upd.

 2024年12月12日~14日、遼寧省瀋陽市において、遼寧省主催の「遼寧国際氷雪経済協力商談推進会」が初めて開催されました。開幕式には、中国側は、商務部から王宇鵬欧州司副司長、遼寧省政府から王健副省長、文化旅游局や体育局などの関連部署及び企業が参加しました。開幕式の参加者は約300人であり、そのうち日本企業・自治体等は約30者(社)、50人でした(外国の国・地域別で最多)。日本企業・自治体等と遼寧省企業の氷雪経済分野での協力の可能性を探るきっかけになったものと考えます。

 日中経済協会は、本推進会を共催するとともに、宮下北京事務所長と趙瀋陽事務所首席代表が参加しました。宮下所長は12日の開幕式で挨拶を行い、趙事務所代表は、13日の現地考察に参加しました。

 なお、日中経済協会は、これまで毎年、日中経済協力会議(通称「東北会議」)を開催してきましたが、これを発展的に解消し、同会議でこれまでに積み上げてきた人脈や経験を活かして、今後は、中国東北4省区(遼寧省、吉林省、黒竜江省、内モンゴル自治区)ごとに経済交流を行うこととしました。今回の日中経済協会の遼寧省政府の連携協力は、この経済交流の最初の取組みとなります。

2. 開幕式概要

開幕式
  • 2028年に第15回全国冬季スポーツ大会(冬の国体)が遼寧省で開催されるチャンスを捉えて、氷雪経済を発展させる。
  • 遼寧省の氷雪経済施設の数と規模はトップクラス。5つ星温泉ホテルの数は全国一位。
  • 特に遼寧省の氷雪温泉文化を全面的にPRし、多次元の氷雪消費を創造し、遼寧省の氷雪ブランドの市場影響力を向上させる。
  • 氷雪スポーツの競技機材と消耗品については、中国国内の生産者や供給ルートは比較的限られており、国内価格は国際価格よりも高い。関連企業と協力と協議を行いたい。
  • 第15回全国冬季スポーツ大会に向けて、スポーツイベントなどを拡大し、盛り上げていきたい。
  • 第15回全国冬季スポーツ大会のスキー会場の建設プロジェクトは、総投資額は24.32億元で国家プロジェクト。2025年4月に全面着工し、2026年10月に完成を目指す。各プロジェクトで建設企業や運営企業等を募集中。

3. 中国の氷雪経済の状況

  • 氷雪経済の経済規模は、国務院が最近発表した文書によると2027年には1.2兆元を超えると予測。
  • 中国の氷雪施設が増加しており、2023年でスケートリンクは1,912か所(前年比16.11%増)、スキー場は935か所(前年比6.74%)。【※日本のスキー・スノーボード場は400か所程度(2022年)(文部科学省・スポーツ庁「体育・スポーツ施設現況調査」より)】
  • 2023年のスキー設備市場規模は178億元、2024年は188.7億元と予測。
  • 2022‐2023年の冬季の中国のスキー人口は1,118万人(前年比-7.51%)、スキー人口×スキー回数は1,983万人回(前年比-8.62%)。全人口に占めるスキー人口の割合は1%であり、他国と比べても潜在力が大きい。【※日本のスキー・スノーボード人口は430万人(2020年)(日本生産性本部「レジャー白書」より)】
  • 氷雪スポーツや氷雪観光に関連する人々の総収入は、2022-2023年の冬季で3,490億元となり、2023-2024年の冬季で5,500億元と予想。
  • 氷雪消費も、一線都市から二線・三線都市に移っており、主な消費者層は中産階級から若者。
  • 氷雪スポーツや氷雪観光の一人当たりの消費額は、2022-2023年の冬季で1,119元となり、2023-2024年の冬季で1,350元と予想。
  • 氷雪経済を趣味として初体験する人が多い。

4. 開幕式での主な発言

(1) 王健 遼寧省副省長

  • 3億人を氷雪経済に参加させる重要指示を実施するため、遼寧省は3か年計画を策定。
  • 2028年に第15回全国冬季スポーツ大会(冬の国体)が遼寧省で開催されるチャンスを捉え、氷雪経済を発展させる。
  • 遼寧省は地理的位置が優位であり、中国東北部で唯一海岸線があり、豊富な海洋資源がある。大連などで開催される氷雪カーニバルは多くの観光客を引き付ける。
  • 遼寧省の氷雪経済施設の数と規模は全国トップクラス。スキー場の数は32か所(営業中のスキー場は31か所との説明あり)、面積は266ヘクタール、ゴンドラは28本、4種類のスケートリンクが12か所、自然スケートリンクは100か所以上ある。5つ星温ホテルの数は全国一位。
  • 遼寧省で氷雪スポーツに参加する人数は2,300万人で全国4位。満州族などの民族文化も特徴的で、氷雪温泉文化は観光客の新たな魅力。
  • 遼寧省の設備製造業は体系化しており、人材・技術リソースなどの蓄積が深い。特に、ハイレベルの氷雪設備製造業の発展は迅速であり、スキー設備において顕著な成果を出している。
  • 2023-2024年の冬季は、氷雪経済プロジェクト数は110か所あり、2020年と比べて倍増。旅行収入は前年比で348.6%増加。
  • 吉林省、黒竜江省、内モンゴル自治区、新疆ウイグル自治区などの省区と交流強化し、国内外の観光客の開拓を強化し、遼寧省の特徴的な氷雪観光資源、特に氷雪温泉文化を全面的に宣伝し、多次元の氷雪没入型消費シーンを創造し、遼寧省の氷雪ブランドの市場影響力を全面的に向上させる。

(2) 張莉 亜洲デジタル集団共同総裁、グローバル氷雪産業連盟秘書長

  • 世界を見てみると、氷雪経済については、アジア、特に中国がもっとも潜在力のある市場となっている。
  • 2022年の北京冬季オリンピック以降、中国の氷雪経済は急速に発展。施設建設や氷雪観光客も安定的に増加。
  • 経済規模は、2025年に1兆元を目指しているが、国務院が最近発表した文書によると2027年には1.2兆元を超えると予測されている。
  • 中国の氷雪施設が増加しており、2023年でスケートリンクは1,912か所(前年比16.11%増)、スキー場は935か所(前年比6.74%)となっている。2023年のスキー設備市場規模は178億元、2024年は188.7億元と予測されている。
  • 2022‐2023年の冬季の中国のスキー人口は1,118万人(前年比-7.51%)、スキー人口×スキー回数は1,983万人回(前年比-8.62%)である。
  • 全人口に占めるスキー人口の割合は、中国は1%であり、韓国は6%、日本は9%、米国は8%と、これらの国と比べても低い。氷雪観光の潜在力は非常に大きい。
  • 3億人を氷雪経済に参加させるという目標があるが、既に3.4億人が参加している。
  • 氷雪スポーツや氷雪観光に関連する人々の総収入や一人当たりの収入も増加している。総収入は、2022-2023年の冬季で3,490億元となり、2023-2024年の冬季で5,500億元と予想されている。
  • 氷雪経済のブランド化、デジタル化、多様化を推進したい。注目したいのは氷雪消費であり、消費者を理解する必要がある。
  • 氷雪消費も、一線都市から二線・三線都市に移っており(氷雪スポーツへの参加人口が多い省・市は山東省、江蘇省、河北省、参加率が高い省・市は黒竜江省、北京市、遼寧省)、主な消費者層は中産階級から若者となっている。
  • 氷雪スポーツや氷雪観光の一人当たりの消費額は、2022-2023年の冬季で1,119元となり、2023-2024年の冬季で1,350元と予想されている。氷雪観光に費やす時間やリピート率も上昇している。
  • 氷雪経済を趣味として初体験する人が多い。スキーリゾートを専門家向けにするのか、初心者向けにするのかの戦略に関わってくる。
  • 消費者を捉えるためにも、デジタル化された氷雪マーケティングが必要。

(3) 艾芳琳 遼寧省文化・旅游庁副庁長

  • 遼寧省は、スキーや温泉を楽しむことができる。スキー場は38か所あり(副省長は32か所と発言、時点の違いで数字が異なる模様。営業中のスキー場は31か所との説明あり)、氷雪パークが98か所ある。初心者から専門家まで、誰でも楽しめる。氷雪スポーツ大会や海洋氷雪祭りなど、様々なイベントを開催している。
  • 遼寧省には、5,000万元以上の投資を行った大型温泉施設が約200か所あり、都市型温泉施設は約1,600か所ある。5つ星ホテルの数は全国一位。
  • 氷雪と温泉の組み合わせは、心地よいリラクゼーションを提供する。

(4) 王冬 遼寧省体育局副局長

  • 遼寧省では、氷雪スポーツにおいて、多くの世界チャンピオン、オリンピックメダリストを育成してきた。(98年長野冬季オリンピックの女子エアリアル銀メダリスト、06年トリノ冬季オリンピックの男子エアリアル金メダリスト、22年北京冬季オリンピックの女子エアリアル金メダリスト)
  • 2024年の第14回全国冬季スポーツ大会(冬の国体)では、遼寧省代表は、金メダル24個、銀メダル21個、銅メダル23個、合計メダル68個であり、全国冬季スポーツ大会における遼寧省としての最高記録を更新した。
  • 遼寧省は、2019年に全省民氷雪スポーツ大会を創設し、これまでに6回開催し、毎年約100のイベントを実施し、直接参加者は1万人、間接参加者は10万人に達する。
  • また、2022年に遼寧省青少年冬季スポーツ大会を創設し、スケート、スキー、アイスホッケーなど全部で134種目を実施した。また、毎年定期的に青少年冬季スポーツ・トーナメントなども実施しており、毎年約3,000人の参加がある。
  • 氷雪スポーツのレベルを向上させるため、人材の育成・蓄積も進めている。また、専門人材の国際交流も進めている。
  • 氷雪スポーツの競技機材と消耗品は専門性が高く、需要も大きく、国際化のレベルも高い。一方で、中国国内の生産者や供給ルートは比較的限られており、国内価格は国際価格よりも高い傾向にある。関連企業と協力と協議を行いたい。
  • 2028年の第15回全国冬季スポーツ大会(冬の国体)の準備を進める機会を利用し、施設の整備状況を踏まえて、徐々に高水準の氷雪スポーツイベントを実施してきたい。経験を有する企業と協力と協議を行いたい。

(5) 楊洪波 撫順市副市長

  • 2028年の第15回全国冬季スポーツ大会(冬の国体)の雪の競技は、撫順市竜崗山スノースポーツセンターで開催される。瀋陽市から車で3時間、撫順市中心部から車で2時間、最寄りの高速鉄道から34キロの場所である。
  • 竜崗山スノースポーツセンターのプロジェクトの投資総額は24.32億元、計画面積は667.75ヘクタール、スキーコースの全長は28キロ、最大高低差は800メートル、最長滑走距離は5キロ、受入れ人員数は11,404人(最大22,422人)を予定。
  • 第15回全国冬季スポーツ大会(冬の国体)の後は、氷雪スポーツ、屋外スポーツ、レジャー余暇、研究活動会場などに利用することとし、全シーズンで運営する。
  • 国家プロジェクトであり、省の重大プロジェクトになっている。
  • 2025年4月に全面着工し、2026年10月に完成を目指す。
  • スキー場と関連施設のプロジェクトの総投資額は8.38億元。「投資家+EPC+O」モデルを採用し、投資・建設会社を募集。併せて、スキー場やホテルの運営企業、不動産管理企業も募集。
  • スキー場付帯プロジェクト(スキー場の保守運営、リフト・ロープウェイの建設・運営など)の総投資額は7.71億元。建設会社を公募。
  • 水処理プロジェクトの投資総額は1.68億元。建設・運営会社を募集。
  • 道路プロジェクトの総投資額3億元。建設会社を募集。
  • ダムプロジェクトの投資額は1.48億元。建設会社を募集。
  • 中長期的なプロジェクトとして、氷雪村プロジェクト、周辺インフラ施設プロジェクト、軌道・文化旅行スポーツ産業プロジェクト、氷雪装置産業団プロジェクト、飛行場プロジェクトなどがある。その他にも24の関連プロジェクトがある。

5. 地方考察(鞍山コース)

熊克亮 鞍山市経済合作局外資課長(千山景勝地)

千山景勝地(下段は人工降雪)
  • 千山景勝地は、遼寧省鞍山市鉄東区の南東17キロメートルに位置し、景勝地の総面積は145.21平方キロメートル。
  • 千山景勝地は山岳型景勝地であり、主に大仏景勝地、天上天景勝地、五仏頂景勝地、仙人台国家森林公園を含む。
  • 有名な観光地が500カ所以上あり、景観の特色は奇峰、絶石、蒼松、古寺、梨花である。観光地には百年以上の古木・名木が万本近くある。千山の宗教の歴史文化は深く、釈・道は同源で、世界最大の天成弥勒大仏を持つ。
  • 多様化する観光プロジェクトにより、観光客の多様なニーズを満たす。
  • 千山観光グループは多元化した生態文化を頼りに、地元資源を合理的に開発利用し、「観光+文化」、「観光+生態」、「観光+農業」、「観光+スポーツ」などの発展を推進し、全業態の観光構造を構築し、千山観光地の全域観光を推進すると同時に、地元地域の経済社会の全面的な発展を促進することを志している。

熊克亮 鞍山市経済合作局外資課長(荷塘月色生態園観光地)

  • 荷塘月色生態園観光地は2017年に設立され、鞍山市都心から約10キロ。3 A級国家観光地であり、ハス池と豊富な植生を有し、観光客に自然に親しみ、静かさを楽しむ場所。
  • 真夏の季節、ハス池にはハスの花が咲き誇り、景色はとても魅力的だ。冬には、ハス池の月色観光地で氷雪カーニバルが開催され、スノーモービル、乗馬、氷釣りなど多くの氷雪プロジェクトを提供し、観光客を氷雪の世界で存分に楽しむことができる。
  • 観光地内にはピクニックエリア、動物エリア、子供の遊びエリアも設置されており、観光客はここでバーベキューをしたり、動物を見たり、子供と遊んだりして、ゆったりとした時間を楽しむことができる。駐車、飲食など観光サービスを提供している。観光客は観光地内で本場の東北料理を味わうことができ、食べ物を持ってピクニックをすることもできる。
  • これから同観光地内にある約1万平方メートルの土地を利用して、氷雪景観区、遊楽プロジェクト区、レジャー区などを含む氷雪大世界プロジェクトを建設する予定がある。計画投資総額は1,500万元、予想利益は600万/年。

蘇士紅 老院子景勝地飲食総経理

  • 老院子景勝地は、レジャー農業、建築園林景観、高級民宿、摘み取り、バーベキュー、釣り、地域文化公演などの多機能を一体化した総合的な生態農業飲食文化観光目的地である。
  • 遼寧省鞍山市千山景勝地内に位置し、国家AAAA級観光地であり、2018年には国家五つ星レジャー農業と農村観光モデル部門に評定され、鞍山で初めてこの賞を受賞した観光地である。
  • 古い庭の観光地は四方を山に囲まれ、景色がよくて、観光客はここで江南庭園の特色と東北大院の民家の風格を体験することができる。
  • 観光地内には古風な中国式庭園建築群落があり、亭台楼閣、古い家、小さなツリーハウスなどの景色が広がり、伝統と現代の完璧な結合が示されている。また、古い庭には木の家、木の家、テントなど、さまざまな宿泊オプションが用意されており、ニーズの異なる観光客に適している。

本件お問い合わせ

北京事務所長・宮下
TEL: 010-6513-9880
E-mail: miyashita[at]postbj.net

瀋陽事務所首席代表・趙焱
E-mail: yan.zhao[at] jc-web.or.jp

[at]@に変換ください。
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