新型コロナウイルス拡大により世界の風景は一変した。他方で、オンライン利用などの創意工夫でモノ・ヒトの交流が活発化し、新たな形での経済が回りだした。2020年11月には、8年の交渉を経て、日中含む15か国でRCEP協定が署名された。世界の人口・GDP・貿易総額の3割をカバーする巨大経済圏誕生を契機に、サプライチェーンの更なる活性化や多様化が進んでいくことになる。
この秋、日本は2050年までに、中国は2060年までに、それぞれカーボンニュートラルの実現を目指すことを発表した。世界のエネルギー消費量の約3割を占める日中両国の「脱炭素」宣言には、世界の注目が集まっており、日中両国の産学官が脱炭素に向け具体的な連携を進めることは、世界の課題解決に大きく貢献するものと言える。
今回のフォーラムは、「脱炭素に向けたエネルギー協力」が主要テーマだが、最近、「水素」と「カーボンリサイクル」の分野において特に日中の協力が進んでいる。水素分野において、日本は技術開発や実証を進め、世界に先駆けた水素社会の実現に取り組んできた。他方、中国では、工場などから副生物として発生する水素の利活用が拡大している。今後、世界で水素の社会実装を進めていくためにも、安価な水素を活用したプロジェクトの実施など、両国の特徴を活かした更なる協力が期待される。
また、脱炭素社会への円滑な移行のキーテクノロジーであるカーボンリサイクル分野についても、日本は技術開発・実証から将来の社会実装に向けて、着実に取組を進めている。他方、中国は、この分野の技術で多く用いられる水素に関して高いポテンシャルを持っており、日中が連携して取り組む可能性が広がっている。
本フォーラムでは、省エネ・環境分野の技術やプロジェクトに関する積極的な交流や意見交換を通じ、累計で400件を超える協力案件を実現し、具体的なビジネス創出の成果を生み出してきた。本フォーラムを通じ、日中両国が切磋琢磨し、win-winの協力をさらに深化させ、世界の経済と環境の好循環実現に大きな貢献をしていくことを期待する。