中国の環境政策においては、2013年頃からの深刻な大気汚染に対する集中対策に一定の成果を得た後、従来の「汚染物質排出削減」に加えて「CO2等温室効果ガス排出低減とのコベネフィット対策」が提起される頻度が上がってきた。
また、22年6月、従来の「汚染物質排出削減とCO2等温室効果ガス排出低減とのコベネフィット対策」をアップデートするアプローチも提起された。生態環境部を筆頭に、国家発展改革委員会、工業信息化部、住宅都市農村建設部、交通運輸部、農業農村部、国家能源局の7部門合同による「汚染物質排出削減・炭素等温室効果ガス排出低減コベネフィット実施方案(「减汚降炭協同増效実施方案」、以下「コベネフィット方案」と略称)」である。
対策分野は従来の大気汚染分野に留まらず、水環境、土壌汚染、固形廃棄物等の対策と炭素等温室効果ガス排出削減との関係性を念頭にした極めて広範なものであることに、中国の環境政策の独創性が見出せる。同時に、当該政策の背景には、中国の広範な環境分野の汚染の実態の深刻さが依然としてあることも以下の課題認識から読み取れる。
「我が国の発展がアンバランスかつ不十分であるという問題は依然として突出しており、生態環境情勢はなおも厳しい。その構造、根源、趨勢的なプレッシャーが全く緩和されていないことは、カーボンピークアウト・カーボンニュートラル目標への任務をより重く、到達への道をより遠いものにしている」。従って、「先進各国が環境汚染問題の基本的解決後に炭素排出規制強化フェーズに入るのとは異なり、生態環境の根本的改善とカーボンピークアウト・カーボンニュートラルという二大戦略の同時実現を任務としている我が国は、生態環境対策に必要な多様な目標をいっそう際立たせ、汚染排出削減と炭素排出低減を共に進めることが必然の選択となる」との認識であった。